2022年8月8日にSISIFILLE/シシフィーユはコンセプトを改め、オンラインストアを併設したオフィシャルWEBサイトをローンチしました。立ち上げから約7年、これまでを振り返り、経験してきたことやその頃の思いを当時企画/PR/営業を担当していたcumi(現ブランドコミュニケーター)が語ります。
―「もっと早く使えばよかった」。
産後、生理の不快感から解放してくれたのは布ナプキンだった
シシフィーユがスタートしたきっかけは、ブランドの代表的アイテムである生理用ナプキンでした。出産と育児休暇を終えて職場に復帰した私が、社内で5、6年あたためられてきたオーガニックコットンナプキンの企画に出合ったことが原点にあります。私自身、出産後に一般的なナプキンや母乳パッドで突然肌が荒れるという経験をしました。それまでナプキンをつけていて不快に感じたことはなかったのですが、子どもを産んで肌が敏感になったことで一部の化学繊維に反応するようになりました。その時必要に迫られて使ったのが布ナプキンでした。使いはじめた途端にかゆみや不快感から一気に解放されるという、それは衝撃的な体験でした。使い始めるまでは、正直どこか「取り扱いにくそう」という思い込みから手を出せずにいたのですが、実際に使ってみると、「もっと早く使えばよかった」と思えるほど爽快で、まるで肌と一体化しているようなつけ心地でした。感じ方は人それぞれだと思うのですが、私の場合、デリケートゾーンに近い下腹部に感じていた痛みが和らぎ、つけていると硬くなっていた身体がほぐれていくような感覚になりました。
―布ナプキンに近いつけ心地の使いきりナプキンがあったらいいのに!
ただ、小さな子どもを抱えながら布ナプキンだけで生理期間を乗り切ることは、その時の私には難しく思えました。初めての子育てで、まだ目が離せない子どものお世話をしながら家事をこなすことで精一杯。子どもを寝かしつけた後に自分の布ナプキンを洗って干すというたった少しのことさえ負担に感じられたのです。外出時は特に、布ナプキンの管理に不安があり、やむをえず一般的な使いきりタイプのナプキンに頼っていました。 おりものシートだけでよかった授乳中は問題なかったのですが、卒乳をして再び生理が来るようになってからは布ナプキンだけでは煩わしさがあり、「布ナプキンに近いつけ心地で使いきりのものがあるともっと楽に過ごすことができるのに」と、日々感じていました。そんな時に目の前に現れた「使いきりタイプのオーガニックコットンナプキン」。出合うべくして出合ったと思わずにはいられない、私にとっての運命のアイテムでした。
―布ナプキンを無理なく続けるための補完アイテムとして
「このナプキンは多くの人に愛されるようになる」という自信は初めから強く持っていました。その根拠には、自分の体験しか持ち合わせていなかったのですが (笑) それでも、憂鬱な生理期間を少しでも楽にしてくれるアイテムに出合うことは、目の前の景色が変わるほど革命的なことだと確信していたからだと思います。
一方、長年オーガニックコットンの生地を販売してきた会社としては、布ナプキンを生産・販売する顧客の皆様が嫌な思いをされないかと懸念していました。でも私は、それに対してまったく不安はありませんでした。シシフィーユのサニタリーパッドはふっくらと厚みがあり、布ナプキンのつけ心地に近いものがあったことからも、布ナプキンを無理なく続けるための補完アイテムになると見込んでいたから。むしろ、布ナプキンを使うきっかけにもつながるプロダクトだと考えていたのです。
―従来のナプキンにはなかった、こだわりぬいたビジュアルデザイン
生理用ナプキンのパッケージとしてそれまで当たり前だった過度に派手なデザインや、ナプキンの絵が大々的にプリントされたようなパッケージとは真逆のものを描いていました。本当に求められるパッケージ、それは買う時に隠す必要がなく、お家でもそのまま置いておきたくなるもの。シンプルでインテリアの邪魔はしないけれど、手に取った時に気持ちが高まる、そんなイメージ。そういったものがなかったからこそ、パッケージは必ず納得のいくものにしたいという思いが強くありました。
また、サニタリーパッドについてはサイズや入数、経血の量をあらわすマークなど、必要な内容だけをシンプルに印字し、不要な要素は極力削ることにこだわりました。様々な売り場で扱われることを想定して、生理用ナプキンであることがわからないようにロゴだけがプリントされた面をつくるなどといった工夫も。
このようなビジュアルにおける細やかな配慮は、ブランドの立ち上げからアドバイザーとしてチームに参加してくださっていたYORK.代表の山藤陽子さんとグラフィックデザイナーの田部井美奈さんの存在なくしては実現できなかったことです。自信を持って良いと思えるプロダクトだからこそ、パッケージの遊び心はとても重要だと捉えています。山藤さんと田部井さんが思いを形にしてくださったことで、心を掴む意外性のあるパッケージは、今ではシシフィーユにとって欠くことのできない重要な要素になりました。
―シシフィーユのプロダクトが自分を労わるきっかけになってくれたら
コンセプトには、ブランド名を決めていく過程や企画を進めていく中で見えてきたことをそのまま採用しました。私は子育てをしながら働くという経験で日々感じることを原動力に、同じような環境にある人や、現代社会で様々な葛藤を抱えて忙しく生きる人たちを元気づけたいという気持ちが強く、プロダクトを通して少しでも「誰かの力になりたい」という思いをコンセプトに込めました。
ブランド名は、意見を持ち寄り、話し合いを重ねて決めました。最終的に辿り着いた「SISIFILLE/シシフィーユ」は、「私たちは女の子」という意味も持つ造語。女の子というマインド・MOODは、何にもとらわれることなく心に持っておきたいもの。それが自分を優しく包み、労わる気持ちにつながる。忙しいとつい雑になってしまったり、疎かになってしまったりするけれど、シシフィーユのプロダクトが自分を労わるきっかけになってくれたら。「うんうん、わかる!そうだよね!」という共感から生まれたこのブランドスピリットは永遠です。
■ cumi / SISIFILLEブランドコミュニケーター
幼少期をインドネシアで過ごし、大学卒業後はアパレルで販売やPRなどに従事。2015年自身の体験をいかし、オーガニックコットンブランド「SISIFILLE」の立ち上げを担う。現在はサンフランシスコベイエリアを拠点に、シシフィーユWebサイト内のリーディングコンテンツ企画やSNS、製品企画に携わる。
Edit : Nao KatagiriText : cumi