このウェブサイトはお使いのブラウザーに対応しておりません。Edge, Chrome, Safari, Firefoxのいずれかで再度お試しください。

不調から学んだ養生のある暮らし―女性の心と身体を整える中医学―藤井愛さん

神奈川県葉山町に暮らし、中医薬膳営養師として活動する藤井愛さん。以前はアパレルのプレスとして働いていた藤井さんが中医学と出合ったのは、身体の不調に悩んでいた時でした。中医学を学び、薬膳や漢方などを通して実践していくと、身体が変わることを真に実感したといいます。そして今は、自らの体験を通して、変化しやすい女性の心身を暮らしの中の身近なところからサポートしたいとFIVE TASTES OF STUDYを主宰。ワークショップや講座では、季節や体調に合わせた養生法について伝えています。そんな藤井さんにこれまでの道のりや中医学について話をお聞きしました。

「陰」と「陽」。そんな相反するものに惹かれた子ども時代

古代中国から伝わる陰陽論では、自然界にある全てのものには対立する2つの面が存在していると考えられています。天と地、昼と夜、夏と冬、上と下…。世の森羅万象は全て「陰」と「陽」に分けることができ、これらは互いにバランスをとりながら存在しているのです。

今振り返ると、子どもの頃から相反するものが混ざり合う様子が好きでした。たとえば、修学旅行で訪れた長崎の日中の文化とカトリックの宗教観が混ざり合った街並みや、陰と陽のような両極端な表現がされているファッションショーといったものに妙に惹かれたのです。小さい頃から宗教観について考えたりすることも好きでしたし、高校生の時には手塚治虫が描く哲学に夢中になりました。カトリックの家庭に育ったことも私の根っこの部分に大きな影響を与えていたのだと思います。

高校卒業後は野生動物の保護活動がしたいと、ケニアへ留学しました。語学を学びながらナイロビに1年ほど滞在したのですが、現実は私の想像を遥かに超えた厳しい環境でした。18歳の私が容易に手を差し伸べることができる世界ではないことを思い知り帰国。ファッションが好きで、高校生の頃からアパレル業界の大人たちにお世話になっていたこともあり、ファッションの世界に飛び込んでみることに。そして都内のアパレルブランドで働き始めました。

産後、突然襲った不調。つらい日々から救ってくれた鍼灸、そして中医学との出合い

最初に身体に異変が起きたのは、20歳の時。耐えられない程の腹痛で病院へ駆け込むと、卵巣嚢腫がお腹の中で破裂していたことが分かりました。子宮中で内出血してしまい、緊急手術という事態に。思い返せば、中学生の頃から鎮痛剤が手放せないほど生理痛がひどく、出血量も異常に多いなど、身体からのサインが出ていたことに気がつきました。今なら体質改善できることが分かりますが、当時は知識がないし、不調は仕方がないものとして諦めていたんですよね。そして大きな転機となったのが、娘二人の子育て真っ只中だった32歳の時。動悸やめまいがひどく、夜は眠れず朝は起き上がれないといった不調が突然私を襲ってきたのです。次第に子どもが学校から持ち帰ってくるプリントの文章が読めなくなってしまい、これは脳に問題があるかもしれないと、病院で検査してもらっても原因が分からない。苦しい日々が2ヶ月ほど続いた時、友人の勧めで近所の鍼灸整骨院にかかりました。すると、中医学でいう「肝」が弱っていることが分かりました。いわゆる自律神経失調症だったんですね。体調は鍼治療を受ける毎にみるみる回復していき、そんな身体の変化が嬉しくて、通院の度に先生からいろいろな話を聞くうちに、中医学というものにどんどん惹かれていきました。

中医学によって満たされた心と身体

都心から自然豊かな葉山に越したのを機に薬膳の学校に通い始めました。そこで私は自分が「気」が足りていない「気虚」という体質であることが分かりました。そこからは漢方を飲んだり、お灸をしたりと、学んだ養生法をひたすら試すということの繰り返し。幸い私は身体の反応が出やすい体質なので、すごく試しやすかったんです。先生からナツメ、ハトムギ、金針菜、竜眼肉、クコ、生姜、骨つきの鶏肉が入ったスープを毎日飲むといいよと教えていただいて、大量に作って冷凍しておき、大根を入れたり、山芋を入れたりとアレンジを加えながら毎朝飲み続けました。すると、それまでいつも疲れやすかった身体がびっくりするぐらい元気になり、食で身体や体質を変えることができると身をもって実感することができました。また自然に恵まれた葉山に引っ越したことで、その土地で採れた旬なものを取り入れやすくなったことも良かったと思います。今では、体調や季節の変化を感じながら、お灸や漢方、お香、中国茶を取り入れることが日々のルーティーンになっています。

中医学を学び始めて、陰陽と五行という考えを知ったことも私の人生において大きな出来事になりました。自然界のあらゆるものは「陰」と「陽」から成り立つと考え、自然の変化や関係性を「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素に分類する理論を学んだ時、私が小さい頃から不思議に思っていた哲学的な問いが全て解決されたような感覚がありました。そして、なぜあの時身体を壊したのかということを始め、私の人生に起こった様々なことの要因が紐解かれ、次から次へと腑に落ちていったのです。陰陽と五行という軸で物事を見るようになった今は精神的にもすごく安定していると感じています。

ファッションも中医学も自分をいい気分に整えるためのもの

中医学って堅苦しく思われがちなのですが、実はすごく自由なもの。理論はありますが、自分の感覚や解釈という部分も大事な要素なのです。人が100人いれば100通りの人生があって、それぞれが違う体質を持っています。だから、一口にこれを食べた方がいいよと言っても、100人全員には当てはまらないのです。体質によって、その人にとっての「いいもの」は違うからです。だから一人ひとりを診て、この人は元々虚弱体質だなとか、この人は足りすぎているからデトックスした方が良いなとか、その人の背景を想像しながら人間観察をします。理論に基づいた上で自由に解釈しながら、答えを導き出していくのです。だから、1+1が2ではなく、5にも6にもなるのが中医学。難しいですが、そこがすごく楽しい。私に取ってファッションと中医学は通じるものがあって、どちらもセンスや感覚的な部分を楽しむことができるし、自分をいい気分に整えるためのものなんです。

いつか、お茶を飲みながら話を聞くような小さな場を持つことができたら

今は、中医学の考え方や薬膳などを必要な人に伝えたいと、植物療法士の風間ゆみえさんが主宰しているオンラインコミュニティROOMYSで中医学講座を行なったりFIVE TASTES OF STUDYを通じて体質や季節に合わせた養生法や暮らしに取り入れやすい薬膳の講座やワークショップを行なったりしています。先日、講座で平均寿命40歳だった清時代の中国で74歳まで健康に生きたという西太后(せいたいこう)の養生法を取り上げたのですが、彼女はファッショニストでもあったそうで、写真を見るとすごくおしゃれなんですよ。そうやって敷居が高く思われがちな中医学をいろんな視点で伝えて、身近に捉えてもらえたらいいですね。どういう形になるかは分からないですが、いつかお茶を飲みながら話を聞くような小さな場ができたらいいなと想像しています。中医学って知れば知るほど奥が深いんです。だから学びをやめずに、ずっと挑戦していきたいと思っています。

■  藤井愛 / 中医薬膳営養師
ワークショップなどを通して、漢方や薬膳などを取り入れた女性の心や身体との付き合い方や、養生の世界を初心者にもわかりやすく提案している。スタイリスト風間ゆみえさんが主宰するオンラインウェルネスコミュニティ『ROOMYS』で講師も担当。

Text&Edit : Nao Katagiri
Photo : Nishitani Kumi
Interview:cumi

初めてご注文で10%オフ。クーポンコード [ WELCOME10 ]

Cart

No more products available for purchase

カートに商品がありません。