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強さこそがやわらかさを生み出してくれる ―グラフィックデザイナーがシシフィーユに宿したものー 田部井美奈さん

―従来の市販品にはない、家でもそのまま置いておきたくなるようなパッケージデザインの生理用ナプキンを作りたいー。2015年のシシフィーユ誕生時、その思いを形にしてくれたのがグラフィックデザイナーの田部井美奈さんでした。リニューアルにあたって一新されたビジュアルもすべて彼女の手によって生み出されたもの。SISIFILLE(シシフィーユ)のフィロソフィーを熟知した田部井さんと、当時企画を担当していたcumi(現ブランドコミュニケーター)がデザインのこと、コミュニティに対する思いなどを語りました。

製品のクオリティに自信があるからこそ、パッケージの遊び心は重要だった(cumi)
―信頼できる良いプロダクトとして脈々と浸透していると感じた(田部井)

cumi:田部井さんには、シシフィーユ立ち上げ時よりブランドロゴをはじめ、プロダクトのパッケージやリーフレット等のデザインをすべてお願いしてきましたが、最初のパッケージは生理用ナプキンでしたよね。

田部井:お話を頂いた時は、本当に良いもの、素敵なものを作りたい、という思いを持って依頼してくださったことが嬉しかったですね。実際のプロダクトも張りぼてではなく、丁寧にこだわって作られていて。これまでにないものを作るんだ、という感覚があったのを覚えています。

cumi:製品のクオリティに自信があるからこそ、パッケージの遊び心は重要だと考えていたんです。実際に、シンプルで洗練されたデザインでありながら存在感のあるパッケージにしていただいて、家ではインテリアの邪魔をしないし、展示会やショップではディスプレーとしても映えるし、「こういうものが欲しかった」と好評の声をたくさんいただきました。

田部井:不要な要素は極力削って、「女性的だけれど、強さがある」、そんなイメージを持ってデザインしました。あれから何年も経ちましたが、いろんなところで製品を見かけるようになりましたよね。信用できる商品として紹介されているSNS投稿や記事を度々目にしながら、良いプロダクトとして脈々とみなさんの中に浸透しているのだなと感じています。

誕生から7年が経ち、生まれ変わったシシフィーユ。
新たなデザインに込められた思いとは?

2022年、新たな舵を切ったシシフィーユ。ブランドコンセプトのリニューアルに伴い、ビジュアルデザインを一新することになり、田部井さんにはパッケージデザインに加え、Webサイトのデザインも担当して頂きました。

cumi:「SOFTEN THE WORLD. 」という言葉と共に新たに掲げたコンセプトをお伝えした時、率直にどのように受け取られましたか?

田部井:7年前のローンチのときに掲げていた女性らしさ、女性であることというよりも、その人自身の強さ、生き方ということにより焦点が向いているのだなという印象を持ちました。

cumi:そうですね。使い手がどう受け取るかはもちろん自由ですが、提案する側があえて対象者を決める必要はないんじゃないかと考えるようになったんです。大事にしたいのは性別ではなく、何かワクワクする気持ちだったり、いいね、かわいいね、っていう気持ちだったり、そういった女性的なマインドの部分。新しいパッケージのデザインではどのようなことを意識されましたか?

田部井:最初は「S」の文字を使って何かできないかと模索していたのですが、だんだんもっと抽象的な表現でいいんじゃないかと考えるようになりました。「多様性」や「ジェンダーレス」というキーワードを噛み砕きながら考えるうちに、少しずつ感覚的になっていって。そして最終的に、「S」を抽象的な形として捉えるというところに行き着いたんです。

cumi:デザインに関してはこういうふうにしてほしいと言葉で細かく伝えたわけではなくて、コンセプトに紐づくキーワードとイメージからこちらの意図を汲み取ってくださって。最終的なデザインを見たときに、「これだね!」ってチーム内ですごく盛り上がったんですよ。やっぱりずっと見てきていただいているので、ブランドのことをよく理解してくださっているんだなと改めて感じて、とても嬉しく思いました。新しいWebサイトの全体的なデザインについては、どのような気持ちで取り組んでくださったのでしょうか?

田部井: Webだからこうしなければいけないという固定概念をできるだけ取り払おうという意識がありました。なので、紙物のグラフィックをやるときに近い感覚でしたね。 

cumi:「らしさ」はあえて意識せず、自分のスタイルでやってみるというのは、新しいシシフィーユ像にも通じるところがありますね。

シシフィーユが思い描くコミュニティ作り。
いろんなコミュニティが輪になり、重なりあって自分が形成されている(田部井)
固執せず、柔軟にいたい(cumi)

リニューアルにあたってシシフィーユは、オーガニックコットンの「やわらかなプロダクト」として新たにアンダーウエアのラインをローンチ。さらに、シシフィーユの思いに共感を寄せるユーザーの方々と共に「やわらかなコミュニティ」を作っていくことを決めました。

cumi:シシフィーユの考えるコミュニティとは、ウェブサイトやSNSを通じて様々な人のストーリーに触れて、その思いを分かち合う場所なんです。たとえば、何か思い悩んだときに覗きにいくとヒントのようなものがもらえたり、元気がでたり、誰かにとってそんな存在になれたらと考えていて。個人的にも、日本からアメリカに引っ越して心細かった時、コミュニティの存在に救われたんです。

田部井:人には拠り所が必要ですよね。私自身、仕事でもプライベートでも、価値観が近しい人が自然と周りに増えてきて、それほど会話を重ねなくても考えを共有できる関係性はすごくありがたいなと感じています。一方で、もっと外のコミュニティにも触れるべきだなという思いもあるんです。そうすることで自分が身を置くコミュニティをより理解することにもなるし、外に触れることをしないと、自分自身が閉じていくような気がして。

cumi:固執せず、柔軟にいたいですよね。例えば、生理のようなプライベートな悩みを友達と話さない人もいると思うのですが、普段接しているコミュニティではそうであっても、シシフィーユのコミュニティの中ではそういった会話に参加できる、みたいなこともありますよね。そういう意味では、コミュニティもいくつか持っているといいんでしょうね。そこを行ったり来たりして。

田部井:そうですね。みなさんひとつのコミュニティに属しているわけではなくて、いろんなコミュニティが輪になり、重なりあって自分が形成されているのだと思いますが、その輪を柔軟に開いたり閉じたりできるといいなと思っています。長いこと同じ場所に住んで、同じところで働いていると、同じ思考にならざるをえないのですが、いろんなコミュニティを持つことで多くの世界と触れ合うことができますよね。

柔軟でいるために必要なこととは?
―強さこそがやわらかさを生み出してくれる(田部井)

cumi:「芯がありつつもやわらかく」ということはシシフィーユの立ち上げ時から今も変わらない信念でもあります。

田部井:今回、Webサイト内のモデルカットで起用されていたモデルさんも、やわらかさの中に強さを感じる佇まいがあって、すごくいいなと思いました。新しいシシフィーユ像にピッタリとはまっている感じがして。

cumi:私もそう思います。ナチュラルでありながら芯のある雰囲気にすごく惹かれました。

田部井:やわらかさを持つためには、強さも必要だと思うんです。やわらかいという言葉からは、おおらか、やさしい、甘いといったイメージが連想されがちですが、そういうことだけではないですよね。ただ単に全方向にやさしいということではなくて、それぞれが思考し理解した上で相手に接することや、時に言いたいことを率直に伝える強さこそが、やわらかい関係性を築いてくれる。やわらかな世界とはその先にあるのだと思います。


■ 田部井美奈 グラフィックデザイナー・アートディレクター

’14年に独立、田部井美奈デザインを設立。広告、パッケージ、書籍などの仕事を中心に活動。主な仕事に『石川直樹 奥能登半島』『(NO) RAISIN SANDWICH』『PARCO CHRISTMAS  2020』『武蔵野美術大学 イメージビジュアル』「Ginza Sony Park#009 WALKMAN IN THE PARK』」、展示『光と図形』など。2019 ADC賞受賞。
instagram: @mina_tabei
HP: minatabei.com

■ cumi / SISIFILLEブランドコミュニケーター

幼少期をインドネシアで過ごす。大学在学中よりアパレルで販売を経験し、卒業後はPR等として働く。2015年自身の体験をいかし、オーガニックコットンブランド「SISIFILLE」の立ち上げを担う。現在はサンフランシスコベイエリアを拠点に、シシフィーユWebサイト内のリーディングコンテンツやSNS、製品企画を担当している。

Photo : NISHITANI KUMI      
Text&Edit : Nao Katagiri
Interview:cumi

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