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COMMUNITY

自然界に存在するわたし達が豊かに生かし合える世界 / ウィーバー佳奈さん

家族で暮らすカリフォルニア州ベイエリアを拠点に、地球上に存在する、多様な植物の種を未来に継いでいくための研究・活動をしているウィーバー佳奈さん。“人間は自然の一部であり、自然自体だ”という感覚を大事にしているという佳奈さんが、自身の出産を通じて思いを強くしたのは、自分が元気でいないと人を幸せにすることはできないということ。“私たちが自分をどう扱うかが世界をどう扱うかに繋がるし、世界をどう扱うかが自分をどう扱うかにもつながる”と語る佳奈さんに、人と自然が支えあって生きること、そして自分を大切するということについて聞きました。 ―五感で自然と世界を体感した子ども時代 幼少期を振り返ると、今の私につながる種があちこちに撒かれていたのだなと感じます。都心に生まれ育ったのですが、都会の中にいながらミクロな世界で自然に触れる機会がたくさんありました。通っていた幼稚園には田んぼや畑があって、みんなでお米や野菜を育てていて。田んぼを裸足で歩くと、足の指の間から土がニュルっと出てくる感覚や土の中からウワっと立ち込める生命の匂いを今でも思い出します。五感に染み付いているんですよね。その幼稚園では、カンボジアで地雷の被害を受けた子どもの支援というような社会活動もしていて、同じ地球の上で私とは全く違う暮らしをしている同い年の子どもがいるということを知り、なんでこんな状況が生まれるのだろうと強い衝撃を受けました。その頃から環境問題や社会問題に関心を持ち始めて、幼いながらに“人間という生き物として、この地球でどう生きていくか“という問いがいつも頭にありました。 ―種というのは、人と大地が紡いできた関係性の結晶なのだ 父の仕事の都合で7歳から10歳までをアメリカで過ごし、その後帰国。中学生の時は学校に馴染めず不登校だった中、9.11が起きたんです。色々調べていくうちに、地球が大変なことになっていることを感じて、“家の中でゴロゴロしている場合じゃない!”と奮起。環境問題に足を踏み入れたいという気持ちが高まり、その後の進路の方向性が定まっていきました。大学では、環境にやさしい農業と食のシステムの在り方を研究テーマとし、アフリカのモザンピークの農業開発調査をするように。現地で伝統的な農業や地域の在来作物の種を守っている女性たちの話を聞くうちに、種というのは、人と大地が紡いできた関係性の結晶なのだと感じました。何世代もの人たちが、その土地で自然と対話しながら、今の形に至るまで紡いできた長い道のりに気づいたとき、それまで個体として見ていた植物や種に対する見方がガラッと変わったんです。そうして、情報や可能性がぎゅっと詰まったカプセルのような種という存在にどんどん惹かれていきました。一方、ここ100年ぐらいの間に地球上の7~9割もの種が絶滅したと言われています。自然の中で生かし合う多様な種子を未来に継いでいきたい。この時に感じたことが今の活動の原点となっています。(写真)佳奈さんの種コレクション(ライ豆, にんじん、ポピー、ホワイトセージ、ジャカランダ等) ―産後の経験から自分を大切にする方法を学んだ、セルフケアの第一歩は耳を傾けること オランダの大学院の研究室で出会ったパートナーと結婚し、妊娠。今後どこに暮らそうかと話し合い、妊娠中に彼の出身地であるカリフォルニアへ引っ越しました。産後、すぐ研究に戻りたい気持ちとは裏腹に、体は思うように動かず…。私は、自分を犠牲にして活動するのではなく、自分を大切にしながら自然界や他の全ての存在を大切にするというのが一番持続的な活動方法だと考えているので、まずは自分の体を最優先させることにしました。ところが、私自身が自分を大切にする方法を知らないことに気がついたんです。私たちの世代は特にかもしれませんが、学校でも社会でもどちらかというと協調性が重んじられて、自分を大切にするということをあまりやってこなかったと思うんです。誰からも強いられていないのに無意識に自分のニーズを我慢して、相手や子供のニーズに応えるという癖がついていたんですね。産後は、それに一つ一つ気づいて、自分に意識を向け直すという作業の繰り返し。そうやって、自分を大切にするということを少しずつ学んでいきました。(写真)アーバンパーマカルチャー実践者でもあるパートナーのアントニオさんと息子のリオ君 自分を大切にすること、自分を愛するということ。言葉で理解しつつも、いざ行動に移すとなるとどういうことなのだろうと戸惑ってしまう人も多いのではないでしょうか。私にとって、セルフケアの第一歩とは、耳を傾けることです。自分自身との関係、人との関係、植物との関係、どれもそうですが、まずはそこにいる相手に耳を傾けて話を聞いてみる。植物だったら、感じてみる。そうした時にどういう感覚が湧き上がってくるのか、自分の内に耳を澄ましてみる。スマホやパソコンから情報が溢れ出てくる現代の暮らしでは、自分以外のことに意識を向けながら一日を過ごしがちです。だけど、これまで聞く習慣のなかった自分の声を拾い上げて、そういう声があるんだということを受け止めてあげる。地味かもしれませんが、そこがセルフケアの入り口です。たとえば、今コーヒーを飲んでいるけれど、本当はチャイが飲みたかったかもしれないというような内なる小さな声。些細なことだけれど、そういう心の声を意図的に丁寧に感じてあげること。自分に対してそれができないと、人や自然の声にも耳を傾けることができないと思うのです。 ―自分を大事にしながら地球と調和した暮らしをしていきたい 産後の体にパソコン作業が負担に感じたので、種や植物に関する講演会を開くなど、できることから少しずつ仕事を再開しました。ずっと学者の道に行くというビジョンを持って、昨年までカリフォルニア大学サンタクルーズ校の環境学部に在学していたのですが、去年大学を辞めました。きっかけとなったのは、パートナーのおばあちゃんが亡くなったこと。90歳を超えて大往生だったのですが、死を受け入れて過ごすという最期の日々を一緒に過ごさせてもらったんです。自然の死のプロセスを目の当たりにして、残りの人生何かできるかな、もし数年後に死ぬとしたら今何がしたいかなということをすごく考えました。そして出た答えが、自分という素材を使って世界に貢献したいということ。大学は素晴らしい環境だったし、研究も楽しかったけれど、知識がパブリックに広がっていかないということがフラストレーションでもありました。私がこれまでいただいてきた貴重な体験や知識をもっともっと広くシェアしたい。残りの人生で今が一番若いのだから、やりたいことをしようと思うようになったんです。(写真)まだ未熟な花豆 今は種子の保全活動、人同士をつなげる活動や研究をしながら、植物とセルフケアの教室やオンラインスクールを立ち上げてやっています。今アメリカに地域の在来種を集めて、コミュニティで保存していくという取り組みがあるのですが、日本でも同じようなことができたらと考えています。今、自然の循環の中で生きることを体現してきた先人たちが高齢化し、すぐに受け継がないと残せなくなってしまう声がたくさんあります。これからの地球の在り方の一番ヒントになると思うのが、植物や大地と密接に関わって関係を紡いできた人たちの軌跡。アメリカでもネイティブアメリカンの方から生きる知恵を学び直そうというムーブメントがありますが、同じことが世界中で起きています。私たちが今方向転換して、人と大地、自然が互いを生かしあう関係を再構築し、健康な未来を次世代につないでいきたいんです。 ■  Koa Weaver 佳奈 (ウィーバー佳奈)  民族植物学者、薬草専門家、自然療法ウェルネスコーチ。一児の母。世界を旅しながら、各地の植物の美しさ、薬草学、種の多様性、植物にまつわる文化の多様性を次世代に手渡す方法について探究。東京大学大学院修士、オランダエラスムス大学社会科学研究所修士。カリフォルニア大学サンタクルーズ校環境学博士課程単位取得退学。国際民俗生物学会所属。米国自然療法ウェルネスコーチ資格。植物とのつながりを通じて、自分のことも地球のことも大切にする暮らしを実現することに関心がある。植物、ハーブ・薬草、セルフケア、生物文化多様性保全の分野で講座、コンサルティング、執筆、通訳などを行う。米国カリフォルニア州バークレー在住。好きな食べ物はパイナップルグァバ。 instagram: @seedfromearthYoutube: たねチャンネルHP:Seed from Earth公式サイト Text&Edit : Nao KatagiriPhoto : From Koa Weaver KanaInterview:cumi

# HEALTH# 自分らしく生きる#SUSTAINABLE#パーマカルチャー#ライフステージ

「well-being(ウェルビーイング)」を体現する / Mao Brazilさん

現在1歳になる男の子を育てながら、ご自身で立ち上げられたヘルスケアブランド『HARVEST SPOON(ハーベスト・スプーン)』と、ローカルオーガニックとヴィーガンをコンセプトにした『COSMOS JUICE TOMIGAYA(コスモスジュース富ヶ谷)』を営むMaoさん。モデル、ケータリング業を経て、人の身体と心の健康に寄り添う仕事をしている彼女が考えることとは? 後編では運動、食、そしてブランドとお店立ち上げの背景から、Maoさんが日々大切にしていることについて伺いました。気軽な気持ちで始めた運動と食事への気遣いが、その後の10年にもたらしたこと 運動を始めたのは20歳の時、あるランニングチームに誘われたのがきっかけでした。当時はモデルをしていたので、身体づくりと生活リズムを整えるために軽い気持ちで始めたのですが、翌年にはロンドンで10キロのマラソン大会へ出場し、その翌年には名古屋ウィメンズマラソンでフルマラソンを完走しました。大会へ出場するたびに仲間と一緒に走る楽しさを感じつつ、後半はもう自分との戦い(笑)。根性で走りきることもありましたが、完走した時の達成感はたまらないものがあります。その後も定期的に大会へ出ながら、ランニングは妊娠するまで続けていました。身体を動かすことは自分にとって不可欠だと自覚しているので、妊娠中から産後も自宅でYouTubeを見てヨガやトレーニングをするなど、無理せず自分のペースで運動を続ける日々です。一方食に関しても、東京へ来た頃から体調を優先してできるだけオーガニックの野菜を食べたり、食材はファーマーズマーケットで買うようにしたりしてきました。そこで出会う農家の方々や、自然と調和して暮らす人たちの話を聞くと環境問題への関心の高さに共感できたり、私自身のマインドとも近いものを感じられたり、とても心地が良かったんです。 そして、食へのこだわりがより強くなったきっかけは妊娠でした。身体が添加物を受け付けなくなったことや、出産のためにハワイ島の大自然の中で暮らした経験から、それまで以上に食べる物の持つ力を強く感じることが増えたんです。さらに、地元で採れたフレッシュな物をいただく美味しさを体感し、それを作る方々の想いが直に聞ける安心感を得られたことで、「いただきます」や「ごちそうさま」と言う時の感謝の気持ちがより深まりました。今では、野菜はできるだけ各地の農家さんから直接オンラインで取り寄せたり、遠出した時は道の駅で買ったりしています。私が運動と食事両方において大切にしていることは、それをストレスにしないということ。例えば運動を始めた当初は「モデルとして理想的な身体にしたい」という目的もありましたが、そうすると「ここがダメだ、ここが引き締まっていない」とか、見た目ばかりを意識してしまって辛くなってくるんですよね。でも私は、運動をすることで身体だけでなく、心まで健康になるのを感じたんです。日々の生活に追われて行き詰まったりイライラしたりする時、身体を動かすことで無になれて、心に余白ができる感覚。それは自然に触れることにも似ているんですけど、運動をして身体と心の両方を健康に保つことで、本来の自分を取り戻せるのを感じています。 パンデミックの最中、健康と幸せについて考える中で生まれた『HARVEST SPOON』 そうした中で、パンデミックが到来したのが2020年。家にいながらゆっくり考える時間ができ、健康で幸せであることの大切さについて考え、再認識できた時期でした。そして自分が感じていることを反映させたものを作りたいという想いから、それまで私が飲み続けてきた酵素を使ってサプリメントブランドをスタートしました。それが『HARVEST SPOON)』です。それまでも、その酵素を飲むことで腸内環境が整えられたり、お酒を飲んだ後も調子が良いのを感じ、私自身手放せないものになっていました。そんなお守りのような存在だった酵素でサプリを作るため、大学のチームと一緒に研究するところからスタートしました。私たちが作るサプリには、耐熱性で、生きて身体の中に働きかけるバクテリア由来の酵素を使っているのですが、緑茶に含まれるカテキンと一緒に摂ることでその効果がより高まることがわかったんです。そこから緑茶を育てている農家さんを探し、50年以上前からお茶を有機栽培されている伊勢のお茶屋さんに巡り会いました。また錠剤のサプリメントには粘着剤にパーム油が使われていることが多いのですが、インドネシアではその原料となるアブラヤシが伐採され、オラウータンの住処が破壊されていることが社会問題になっているのを知っていたので、パーム油は使いたくなかったんです。そのために高圧プレスができる日本の工場を探し回りました。資材も環境に配慮したものにこだわりました。容器はリユース、リサイクルできるもの、緩衝材と梱包材にはプラスチックを使わない、そしてラベルやテープは植物性の粘着剤が使われているものを選ぶようにしています。こうして自分のやりたいことを実現していたら結局1年という期間がかってしまいました。それでも気持ちがブレずに形にすることができて良かったと思いますし、資材については環境に優しいことを優先してこれからもどんどんアップデートしていくつもりです。出産のために滞在したハワイでの日々と、私の思いをつめ込んだ『COSMOS JUICE TOMIGAYA』 この考えは、今年の5月にオープンしたジューススタンド『COSMOS JUICE TOMIGAYA』でも同様に取り入れています。ショップの立ち上げは、出産のために滞在したハワイ島での日々がきっかけでした。 ハワイでは毎週、ファーマーズマーケットへ出かけ、地元で採れた新鮮でエネルギーの詰まった野菜を調達していました。その野菜がとにかく美味しかったのと、生産者さんとのコミュニケーションが本当に楽しかったこと。美味しさと楽しさが相まって、気分も体調もとても良かったんです。結果として4ヶ月間、私たち夫婦は毎朝ジュースを飲んで過ごし、最後にはジューサーが壊れたほど(笑)。 そして日本に帰っても同じことができたらなと思い、このジュースバーを立ち上げました。今回は、夫もそうですが、家族や友人、仲間たちと一緒になって1からお店作りをしたんです。カウンターを設置したり、壁にやすりをかけてパテやペンキを塗ったり。息子を抱っこしながら、できることは何でも自分たちでやりました。その地域にいる人々にも受け入れてもらえるよう、ナチュラルでカジュアルで、手作り感のあるお店を目指して。おかげで私自身も行くたびに元気になれる空間になったと思います。お店で出すメニューやレシピについても、サプリと同じく細部までこだわりました。メインはコールドプレストジュースとスムージーで、コールドプレストジュースは全て国産の無農薬野菜、果物を使っています。スムージーに入れるものは海外からのものもありますが、全てオーガニックで作られている野菜や果物で作っています。取引先の農家さんとも直接やりとりをしていて、畑を見に行ったり話を聞いたりして、作物が作られる背景が信頼できるものを選んでいます。その時旬の食材を使って作っているので、メニューも頻繁に変わりますが、その分いつ来ていただいても飽きずに楽しんでもらえると思います。 あとは、看板メニューでもある「ショット」がおすすめです。オーガニックの生姜と沖縄のウコンをメインに、旬のフルーツや野菜を入れて飲みやすくしていますが、これが本当に元気になる! 私はお店へ行くたびにそのまま飲んだり、他のドリンクにショットを追加して飲んだりしているのですが、もう欠かせません。 また、ドリンクを提供する時に使っている瓶はリユース・リサイクルができるものにしていて、カップはコンポスタブル(生分解性)のものを使っています。「HARVEST SPOON」を始めた頃から実施してきた、ゴミになるものはできるだけ使わないということ、これはジュースバーでも引き続き妥協せずに続けていこうと思っています。人と自然に魅了されながら今、自分ができる「well-being(ウェルビーイング)」を体現するこうして振り返ると、運動と食事がもたらす私の心地よさ、快適さの延長線上に『HARVEST SPOON』と『COSMOS JUICE TOMIGAYA』があるのは必然だと思います。どちらも人と人であり、人と自然の結びつき。運動するのも人がきっかけだったし、食に関しても自分と同じマインドの人々が作る食材を手にとるようになりました。そして健康にいい物を作りたくてサプリを作っては、必要としてくれる人へ届けている。日々、お店へ行ってスタッフと一緒にメニューを考えたり、お客さんとコミュニケーションをとることもとても楽しいんです。だから今はこうして、私なりに自分に対しても、家族に対しても、周りに対しても、「well-being(ウェルビーイング)」を感じられる場所やものを作ることを大切にしていきたいと思います。 今後の願望? そうですね、やっぱり私は自然に助けられていると思うから、またいつか自然の中で暮らしたいです。ハワイ島では海に浮いているだけで本当に幸せで楽しかったんです。大人でも子供に戻って過ごせる場所へ、感性豊かな息子にはできるだけ早いうちから自然に触れさせたい。息子には、暮らす環境、自然に敬意を持ち、植物や動物をはじめ全ての命を大事にして欲しいなと思います。■ Mao Brazil/『HARVEST SPOON』Founder、『COSMOS JUCE...

# HEALTH# ORGANIC# 自分らしく生きる#ライフステージ

選択肢が広がる妊娠期、出産こそ自分らしく ー水中出産を通して感じたことー Mao Brazilさん

モデルとして活躍する傍ら、食に対する関心からケータリングサービスを始動。現在は、ヘルスケアブランド「HARVEST SPOON」を運営しながら、ローカルオーガニックとヴィーガンをコンセプトにしたジュースバー「COSMOS JUICE TOMIGAYA」を立ち上げるなど、一貫して心と身体の「well-being(ウェルビーイング)」を追求するMaoさん。そんなMaoさんは、昨年の10月にハワイ島にて水中出産し、現在一児の母でもあります。前編の今回は、自身の生い立ちからパートナーとの出会い、妊娠、そしてハワイでの水中出産について。これらの体験とMaoさん自身の向き合い方について伺いました。 ー大阪で天真爛漫に育ったMaoさんがスポーツを通してパートナーと出会うまで 自分の子供時代を振り返ると、屋内で遊ぶより、外へ出かけて男の子と一緒になって遊ぶような活発なタイプでした。大阪で生まれ、中学時代からモデル業を始めましたが、ベースは粉もの文化の根強い大阪で、3人兄弟の長女として天真爛漫に育った女の子という感じ。一方で、小学生の時に「にがり」が健康に良いというテレビ番組を見たら、お小遣いを貯めて豆腐屋さんへにがりを買いに行ったり、両親の影響で酵素を飲むようになったり、そんな一面もありました。 20歳の時に拠点を東京に移し、モデル業を本格的にスタート。交友関係が広がっていた頃、あるランニングチームとの出会いがターニングポイントのひとつでした。自分としても身体の変化を見つめ直し何か運動をやりたいと思っていたタイミングで、走ることを始めました。そしてそのランニングチームが縁となり、もともと顔見知りだった夫との交際をスタート。それが2018年の話です。彼と出会った時、ルールや形式に囚われずに自分の好きなことを貫いている姿を見て、この人と一緒にいたら人生がもっと楽しく、自由で無限の可能性があるように感じられるだろうなって思いました。マインドやライフスタイルも同じ方向を向いていて、それから3年後の2021年に結婚したのはとても自然な流れでした。 ー2022年、ハワイでの水中出産を決断献身的、手厚くサポートしてくれるミッドワイフとの運命的な出会い そして昨年の10月に男の子をハワイ島で出産。妊娠する前から漠然と水中出産をしたいという思いがありました。水中出産は、赤ちゃんが羊水から水に出てくる時に抵抗なくスムースに出てくることや、赤ちゃんも母体もリラックスして分娩できるということを聞いて、ミッドワイフ(助産師)と家族とのプライベートな空間でより自然にお産ができることに惹かれました。夫もあっさり「いいね」と共感してくれて。 妊娠初期、身体や心の変化について振り返ると、まずは悪阻がキツかったことを思い出します。妊娠が分かってから3ヶ月くらいは何もできず寝たきり。眠いし辛いしでずっと家にいて、卵やお肉を身体が拒絶するようになり食べられる物もフルーツだけでした。同時に添加物の入った食べ物に反応するようにもなってしまい、そういったものを摂った翌日は1日寝込んでしまうこともありました。大変な中でも自分の身体について気づきや発見のある3ヶ月間でしたね。 悪阻が少し楽になってからは産む場所とあわせて、出産を全面的に手助けしてくれるミッドワイフ探しを開始。夫の名前「LONO(ロノ)」はハワイにルーツがあり、平和の神様の名前と同じなんです。子供も彼の名前を継ぐので、それならハワイで出産をして縁を紡ぐのもいいなって。ちょうど同時期にハワイ島で住む場所を貸してくださる方と出会えたこともあり、引き寄せられるように話が進みました。  出産予定月の3ヶ月前にあたる7月に、生活する環境の下見と、ミッドワイフとの顔合わせを兼ねてハワイ島を訪れました。私たち夫婦は共にこの時が初めてのハワイ島だったのですが、ミッドワイフとの出会いは特に印象的でした。 彼女にぎゅーっと強くて温かいハグをしてもらい、一気に信頼感が増しました。そして彼女の妊婦さんと出産に対する愛情深さ。どんなことでも細かくメモを取ってくれたり、パーソナルに接してくれる姿勢も誠実に感じました。実はその時お腹の子が逆子だったんです。でも「全然問題ない。命が生まれる時は生まれるから。」と言ってくれたこの人なら、大丈夫だって確信したのを覚えています。 そして一旦帰国して再度9月にハワイ島へ渡りました。ミッドワイフには日本からも赤ちゃんの状態を伝えていましたが、ハワイ島へ行ってから出産までは週1回、2時間くらいいろんな話をしてくれました。場所は家だったり、彼女のオフィスだったり、ビーチや行きつけのカフェだったり。そこで普通の会話をしながら、生まれてくる赤ちゃんの状態や母体の話、実際に陣痛が来た時やその後どうなるかなども、夫を交えて分かりやすく話してくれました。その時間があったことで、ママだけが頑張って産むのが出産という感覚ではなくなっていけたのはとてもよかったです。あとはハーバリストでもある彼女お手製のプレグナンシーティー(ハーブは主に自家製のもの)やバーム、エッセンシャルオイルを使ってケアしてくれていたのもとても心地よくて。産後は、赤ちゃんに対しても同じようにケアしてくれました。 ー出産目前には、イルカと一緒に泳ぐハッピーな体験も 予定日の1週間ほど前、もういつ生まれてもおかしくないということで、自宅のリビングにプールを準備していました。そんな状況の中、やりたいことの一つだった、妊娠中にイルカと泳ぎたいという想いを抱えていました。妊娠しているとイルカが寄ってきてくれるという話を聞いたことがあったからです。それをミッドワイフに話すと「○○なら、イルカと泳げると思う」と教えてくれて、早速その場所へ行ってみたんです。時刻は早朝5時ごろ、ビーチへ行くと遠く沖の方にイルカたちがジャンプしているのが見えて。そこにはマイクさんというおじいさんが1人いて、私を見て「妊婦さんだ!」と喜んでいて(笑)。彼が「今日は、ドルフィンベイビーが見れるかも!」ってどんどん沖まで泳いでいくので、夫と私も着いて行ったんです。そしたら子供のイルカも含めて40頭くらい、たくさんのイルカが私たちの近くまで来てくれて。そうなると鳴き声も歌っているように聞こえるんですよ。まるで祝福されているかのようで、とてもハッピーなひと時でした。 ーとても穏やかな水中出産と、不便だからこそよかったハワイ島での日々 予定日の朝、生理痛のようなお腹の痛みを経て陣痛が来て、その日の夜に息子を出産しました。陣痛が1分間隔になってからミッドワイフが来てくれたのですが、部屋では夫がこの日のために作ってくれたプレイリストがずっと流れていました。私はというと、ずっと裸でうろうろしていました。辛くなったらシャワーで腰を温めたり、楽な姿勢で寝転んだり、太陽の光を浴びたり。その間、栄養補給のために夫やミッドワイフがフルーツを切ってくれたり、ココナッツウォーターを飲ませてくれたり、一番落ち着く空間で家族とリラックスして過ごしながらその時を迎えました。 生まれる時は、プールの水中に自分で腰を落として、私が自分の手で子供を水の中から引き上げました。胎盤が出てからもすぐにへその緒を切らず、1時間ほど初乳を飲ませながらベッドで横たわって過ごしました。へその緒はその後、夫とミッドワイフがろうそくの火で切ってくれて、その炎を私が吹き消して「ハッピーバースデー!」となる。やっと会えたという感慨深さ、赤ちゃんの柔らかさに驚き、終始感動しながら、たくさんの感情が込み上げて来ましたね。 (写真)へその緒をロウソクで切る瞬間 胎盤は、母体と赤ちゃん両方の身体と心に有効な栄養があるそうで、後にミッドワイフがラボに持ち込みサプリにしてくれました。産後もミッドワイフは頻繁に検診に来てくれて、食材や日用品の買出しや私と赤ちゃんの心身のケアなど、常にサポートしてくれて家族のように過ごせたのは心強かったです。 その他にもいろいろと振り返ってみると、産後ハワイ島で過ごした3ヶ月間は本当に貴重な時間でした。家族だけで大自然の中で子育てに向き合って過ごせたのもとてもよかったです。便利なものはなく、買い物もローカルのスーパーで手に入る限られたものだけ。ただ、外へ出かければ人々が優しくて、地元コミュニティーから分け与えてもらうご飯は温かい。そんな環境がストレスフリーで過ごせた理由の一つだと思っています。 (写真:左から)ミッドワイフがブレンドしてくれたハーブティーと瓶詰めされた胎盤サプリ、イルカと泳ぐ際に導いてくれたマイクさんからもらったイルカのクリスタル、ハーブオイル屋さんが「パートナーにお腹に話しかけてもらいながら塗ってもらってね」と言って突然くれたというオイル。全てハワイでの思い出や時間が凝縮されたMaoさんのお守り。 ー帰国した今、考える子供との未来や命の迎え方について 帰国後はジュースバー「COSMOS JUICE TOMIGAYA」の立ち上げ準備などで忙しく過ごしていて、気づけばもうすぐ息子が1歳になります。今の時点で子供に対して、ああしたい、こうしたいという具体的なことはありませんが、小さなうちから自然と触れさせたいと思っています。そして息子が生まれたハワイ島とのつながりも親として大切にしていきたい。私が水中出産を選択したのは、できるだけ自由でナチュラルな形で、出産までの過程も含めてより自分が責任を持てる形で子どもを産みたかったというのがあります。息子には、いつか出産に立ち合いサポートしていく側になるかもしれないことを考えると、命が生まれることの深さやそれが奇跡であることをちゃんと感じられる人になって欲しいなとも思います。 そして産前から産後まで、ずっと見守っていてくれたミッドワイフが私に対して、アドバイスやサポートをしながらも、絶対に何かを決めつけたり、誘導したり、こうすべきとは言わなかったんです。あくまで私自身が道筋を作って、私がやりたいようにやってくれた。日本ではまだまだポピュラーではない水中出産や自宅出産ですが、妊娠・出産・子育てに関する考え方や選択肢、どうしたいかは人それぞれであり、自分自身で選べるんです。私自身がとても奇跡的でいい時間を過ごせたので、そんな方法もあるということはをいろんな人に知って欲しいなと思います。 ■ Mao Brazil/『HARVEST...

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