「誰しもにライフパーパスがある」ーコミュニティーハーバリストが伝えたい想いー Pai Miyuki Hiraiさん
共にサンフランシスコに暮らし、互いにリスペクトし合える友人関係だというコミュニティハーバリストのPaiさんとSISIFILLEブランドコミュニケーターのcumi。幼い子どもを抱えて渡米し、当時心もとない日々を送っていたcumiはPaiさんの存在に救われたのだそう。「Paiちゃんとそのコミュニティに愛をたくさん与えてもらって心が満たされた。私たちにはそういう心を寄せ合う場所、コミュニティが必要だと改めて感じるきっかけを与えてくれた人なんです」(cumi)。その時の気持ちが「SISIFILE COMMUNITY」の立ち上げにもつながっているのだと言います。普段もPaiさんのカウンセリングを受け、ハーブティやメディスンで心体を整えているというcumiが、Paiさんにハーバルメディスンのこと、そしてコミュニティハーバリストとしての想いを聞きました。 ―「ハーバルメディスンはみんなのものなんだよ」っていうことを伝えていきたい cumi:Paiちゃんはフォトグラファーやメッセンジャーを経て、今はコミュニティハーバリストとしての活動が中心になっているけれど、コミュニティハーバリストという言葉自体にあまり馴染みがない人には、どんな存在と言えばわかりやすいかな? Pai:昔でいったらその地域やコミュニティにいたメディスンウーマン(※1)やシャーマンと呼ばれるような人たちのことやね。自然や植物と深くつながって、植物のエネルギーや治癒力を深く理解し、そのお力を貸してもらえる人。患者さんの症状だけを見るのではなく、同じ目線に立って、その人の感情やトラウマなども深く近親的に診断する。その上で、必要な植物を煎じたりしてメディスンを作る。イメージ的には、近所にいる魔女さんみたいな感じかな。 ※1メディスンウーマン: 自然と調和した人間本来の生き方を人々に取り戻す術や知恵を受け継いだ人々のこと cumi:メディスンがもたらす効果だけでなく、コミュニティハーバリストが心や体の状態に寄り添ってくれるということやその存在自体に意義があるなって感じる。何かあった時にすぐに相談に乗ってもらえるというのは、心身が弱った時にとても支えになるよね。私自身、パンデミック中は特にPaiちゃんのカウンセリングやメディスンにすごく救われたし、これからの時代にコミュニティハーバリストのような存在は絶対に必要だなって肌で感じた。そもそもハーブやメディスンにはどうやって出合ったの? Pai:写真を勉強するためにニューヨークに住んでた時、私ビーガンやったんよね。それはなぜかというと、ラスタの人たちと出合って、ラスタファリア二ズム(※2)のこと、彼らの生き方、政治や食べ物、地球、宇宙に対する姿勢にすごく共感できたから彼らと同じビーガンになったの。その時期にハーブを取り入れたりする、ヘルスコンシャスな生活に目覚めた。私はハーブのことって世の中で起きていることとつながっていると考えていて、そこまで深く理解して扱うべきだと思ってるの。 ※2ラスタファリア二ズム: 1930年代に起こったアフリカ回帰などを唱えるジャマイカの黒人による宗教・政治運動。ラスタファリアニズム思想をもつ人たちを「ラスタファリアン」「ラスタ」と呼び、彼らの多くは、菜食主義・自然回帰的 cumi:世の中で起きていることとつながっているというのは、具体的にはどういうこと? Pai:例えば、システム化されたレイシズムのことをシステマティック・レイシズムっていうねんけど。女性や黒人、先住民などが社会的に不平等な立場になるようなシステムが社会的な構造に組み込まれてしまっているということ。世の中が一部の人しか稼げない仕組みになっていて、お金がないと良い学校に入れなかったり、良い医療が受けられなかったりとかね。私は、階級の差や貧困、差別の問題があることを子どもの学校を通じて目の当たりにしたんよ。そういう現実に直面して、自分なりに何かできないかと考えている時に、ハーバルメディスンに出合ってん。ハーバルメディスンっていうのは、植物から作られている薬のことで、病気を予防・治療したり、健康を増進したりするために使われているもの。日本でいったら漢方のイメージと近いんかな。お金がないと受けられないような今の医療システムは限られた人のものだけど、ハーバルメディスンはみんなのものなんよ。まだそのことを知らない人たちに伝えていきたいと思ったし、人間の本来の力を引き出す植物の力に魅力を感じて、学校に通ってコミュニティハーバリストの資格を取得したの。 cumi:知識は必要だけれど、ハーバルメディスンは身近なもので作ることができるから、みんなに開かれているものだよね。ギバー(人へ惜しみなく与える人)であるPaiちゃんがハーバルメディスンにたどり着いたのは自然の流れだったのだと思う。 ―なんで生まれてきたのか、ひとりひとり目的がある Pai:ハーバリストというのは、その土地のご先祖様たちにもリスペクトを持ち、植物やその土地の魂にお願いして力を貸してもらう許可を取るの。むやみやたらに採集しないことをきちんと理解している人やねん。資源をみんなでシェアして生きていたネイティブアメリカンの時代と同じ精神。でも今の世の中は、分け合いたくない一部の人たちが社会のシステムをつくって多くの人たちを従わせる構造になっているやんか。でも最近、パンデミックになったことで自分のアイデンティティに目覚めて、世の中の仕組みがおかしいと気づき始めた人が増えてきたよね。だからこそ資源をシェアをしていた頃のように戻して、そこからまた新しい世界を始めたらいいと思う。 cumi:Paiちゃんはこれから先、メディスンを通してどういうことをやっていきたい? Pai:もっともっとメディスンを追求していきたい。人生楽しいことが多すぎて、勉強も写真もそうやけど、全うできなかった気がするんよね。でもメディスンのことは生まれ変わってもまたやると思う。みんながなんで生まれてきたのか、ひとりひとりに目的、ライフパーパスがあるの。メディスンを通して、自分が誰なのか、何のために存在しているのか、気づく助けになることを自分の命がある限りやりたいと思っている。それが私の今のライフパーパスやな。全てはエネルギーだと私は思っているから、自分がやりたいと思ったらそうなるし。行きたい方向、ビジョンさえしっかりあれば叶うんよ。 cumi:うん、本当にそう思う。心の声に正直に進むことは、自分にとってだけではなくて、実は周りにも良い影響を与えることになるんだよね。Paiちゃんはそれを体現しているし、伝えていく人だと思う。 cumi:Paiちゃんの思い描いている未来は?どういう暮らしを想像している? Pai:自分たちのコミュニティをつくって、助け合って生きていきたい。政府に頼らずに生きていける術を持ちたいと考えてる。この先は政府に頼る時代じゃなくなるよ。自分で食べるもの、ハーブを育てて、電気も自家発電して、誰にも頼らない生活をしたいねって旦那と話している。未来はそういうことだと思う。理想と今の生活とはまだほど遠いけど、全てのことには理由があるんよ。だから今私がここに置かれているのは、ユニバースが決めたことなんだと思う。 cumi:最後にPaiちゃんにとって「やわらかい世界」とは? Pai:英語で言ったら、レジリエントってことやろ? パンデミックのときによく聞いたワードやね。これからは柔軟性の時代になるよ。想像して、自分が描いたことは必ず形になるの。日々、邪念を抱くこともあるけど、それをはらいながら自分を磨いていくこと。そして自分を知ること。その先にあるのがやわらかい世界なんやと思う。 ■ Pai Miyuki Hirai / コミュニティーハーバリスト 1997年渡米。ニューヨークを拠点にフォトグラファーとしての活動を始める。2001年に帰国し、中目黒にあった「gas-experiment!(後の大図実験)」を拠点に写真家として活動。その後自らもメッセンジャーとして働きながら仲間たちの写真をドキュメントする。2012年に再渡米。現在は母であり、サンフランシスコにて植物と宇宙のエネルギーとつながりながら、コミュニティーハーバリストという肩書きでみんながより良い生活を送るお手伝いをしている。instagram:...